航空会社サイトでの運賃表示にイラッとするので調べてみた

技術ネタではないですが、UI/UXの話ではあります。

航空会社のサイトで運賃検索するとき、最初に目に入る金額が、会社によって「往復の総額」のところと「往復の半額」のところがあります。

で、最初に目に入る金額を「往復の総額」だと思って画面遷移し、実は「往復の半額」だったので総額は倍です、となるとイラッとするわけです。

以前は、割と各社「往復の総額」を表示していた気がするのですが(曖昧な記憶なので本当かは不明)、ぱっと見の金額を安く見せるためか、「往復の半額」を最初に見せるようになってきた印象があります。

一方で、依然として「往復の総額」で表示している会社もあり、同じようなUIで「往復の総額」か「往復の半額」の両パターンがあるのがわかりにくさというかイラッとする原因のように思います。

というわけで、航空会社のサイトで運賃検索してみて、

  • 表示される金額が「往復の総額」か「往復の半額」か
  • 画面遷移の導線上、どのタイミングで表示金額の正体に気づけるか

という観点で各社の比較をしてみました。

調査結果

結果は記事の最後に書いている表の通りなのですが、単純に数で言うと、圧倒的に「往復の半額」を表示する会社が多いです。 しかし、米国系はAA以外「往復の総額」派。一方、ヨーロッパ系はKLだけ「往復の総額」で、それ以外は「往復の半額」派。 アジア系は両者混在という感じで、個人的に目にすることの多いCXやSQは「往復の総額」派だけど、それ以外は「往復の半額」派も結構ある。

各社まちまちなUI

各社サイトを操作してみてわかったのですが、表示されている金額が「往復の総額」か「往復の半額」かを、わかりやすく表示している会社がほとんどありません。UAとHAは明確に金額の並びに「往復」と書いてありますが、それ以外の「往復の総額」表記の会社は明示されていません。

旅程総額を表示する会社

CX、KE、OZは、便ごとに金額が表示されるのではなく、最初に目に入る金額が旅程に対してのもの(最低額あるいは幅で表示)なので、混乱しませんが、DL、SQ、MU、KLは復路便を選択して初めて「往復の総額」だったことに気づく導線になっています。

画面から「往復の総額」か「往復の半額」か区別がつかないことが多い

復路便を選択して初めて「往復の総額」と気づくパターンの画面は、「往復の半額」を表示している画面とぱっと見区別がつかないので、その後の展開(運賃総額)が予測できず、もやもやしたまま便を選ぶことになるので、イラッとするのかなと思いました。

最初に前後3日間の運賃マトリクスが表示される会社もある

なお、AC、CA、CZ、AYは、デフォルト設定での導線で、前後3日間の運賃マトリクスが表示され、そこには旅程総額の日ごとの最安値が表示されるので、便ごとの金額は「往復の半額」ですが運賃総額が頭に入った上で見ることになります。それでも、「往復の総額の最安値」が10万円なのに、「往復の半額」が10万円の便もあったりして、結構混乱しました。

総額が判明するまでの流れ

「往復の半額」で表示している会社でも、総額がわかるまでの流れが会社によって違います。

  1. 明示的に便を選択する前から総額が表示されているパターン(デフォルト選択便の金額あるいは最低額の表示)
  2. 往復とも選択した後で初めて総額がわかるパターン
  3. 往路選択時に一度「往復の半額」が総額として表示されるパターン

1つめのパターンは、まあまあわかりやすいです。最初から総額の目安がわかるので、画面操作時のもやもや感は少ないです。それでも、表示されている総額が10万円なのに、選択肢の中には「往復の半額」が10万円の便もあって、頭がついていかないことも少なからずあります。

2つめのパターンは、往路便を選択するときに「明らかに安い」金額が出てくれば、そこである程度気づけますが、そうでないことも結構あります。往路便に表示された金額が「往復の総額」としても通用しそうな額の場合、復路便の金額を見て「こういう表示になるってことは、この金額は往復の半額表示だな」とうすうす気付き、総額が出て「やっぱり往復の半額表示だったか、結構高いな」と落胆する、という流れになります。

3つめのパターンが個人的には一番嫌で、一瞬往路分の金額が総額のように見えるので、復路便を選んで総額が更新された時に「やっぱりさっきのは往復の半額だったのか」とイラッとする度合いが高かったです。

そもそもの原因

各社UIがバラバラというのが原因ではあるのですが、航空運賃自体、同じ区間・日付でも平気で2倍、3倍くらい金額が動くので、たとえば「10万円」という金額を見たときに「往復の総額」「往復の半額」のどちらでもありえそうで、総額がイメージできずもやもやしたままの操作を強いられることと、「往復の総額」だったらいいなという期待と「往復の半額」だった場合の現実のギャップが、イラッとする背景にあるように思います。

対策

航空会社間で統一したUI/UXになればうれしいですが、なかなかそうはいかないでしょうから、使いそうな会社の特徴を把握しておいて、画面の挙動(検索・操作結果)が予測の範囲に収まるよう慣れていくしかないのかもしれません。

調査結果一覧

日本

航空会社 表示金額 表示の特徴
NH 往復の半額 便選択前から総額表示あり
JL 往復の半額 便選択前から総額表示あり

※日本の国内線は、以前から区間ごとの運賃を表示する文化なので、国際線の話です。

北米

航空会社 表示金額 表示の特徴
UA 往復 運賃表示に「往復」の記載あり
AA 往復の半額 往復選択するまで総額表示なし
DL 往復 明示的な「往復」の記載はなく、次画面遷移して気づく
HA 往復 運賃表示に「往復」の記載あり
AC 往復の半額 導線の最初に出てくる±3日マトリクスでは総額表示

アジア

航空会社 表示金額 表示の特徴
CX 往復 便ごとの表示はなく、往復総額のみの表示
SQ 往復 往路便選択時に明示的な「往復」の記載はなく、復路便が差額表示となるため往復金額だったと気づく
KE 往復 便ごとの表示はなく、往復総額のみの表示
OZ 往復 便ごとの表示はなく、往復総額のみの表示
CI 往復の半額 往復選択するまで総額表示なし
BR 往復の半額 往復選択するまで総額表示なし
CA 往復の半額 導線の最初に出てくる±3日マトリクスでは総額表示
MU 往復 往路便選択時に明示的な「往復」の記載はなく、復路便選択後に往復金額だったと気づく
CZ 往復の半額 導線の最初に出てくる±3日マトリクスでは総額表示
VN 往復の半額 往復選択するまで総額表示なし
TG 往復の半額 往復選択するまで総額表示なし
MH 往復の半額 往復選択するまで総額表示なし

ヨーロッパ

航空会社 表示金額 表示の特徴
BA 往復の半額 往復選択して次画面遷移するまで総額表示なし
LH 往復の半額 往復選択するまで総額表示なし
AF 往復の半額 便選択前から総額表示あり
KL 往復 往路便選択時に明示的な「往復」の記載はなく、復路便が差額表示となるため往復金額だったと気づく
AZ 往復の半額 往復選択して初めて往復の半額だったことに気づく
SK 往復の半額 往復選択して初めて往復の半額だったことに気づく
IB 往復の半額 往復選択するまで総額表示なし
AY 往復の半額 導線の最初に出てくる±3日マトリクスでは総額表示

中東

航空会社 表示金額 表示の特徴
EK 往復の半額 最初の検索結果画面に最低総額の記載あり
QR 往復の半額 往復選択して初めて往復の半額だったことに気づく
EY 往復の半額 往復選択するまで総額表示なし